本記事は映画スター☆トゥインクルプリキュア「星のうたに想いを込めて」についての感想記事になります。当然ですがネタバレ注意。
映画スター☆トゥインクルプリキュア「星のうたに想いをこめて」、素晴らしい映画でした。私も語りたいことがたくさんあります。
ただ…映画の頭から描写を1つ1つ拾っていき、細かく感想を書いていくのでは量が膨大になりすぎますね。
それに、沖縄や世界遺産の風景描写が良いとか、ララが可愛いとか、最後の変身シーンがすごいとか、そんなものは映画を見た大部分の人が分かっていることで、さらに言えば文章化して語るようなものでもないでしょう。
というわけで今回は、ララとひかるの動きを自分なりに拾っていこうかな~と思いました。普段より自己解釈・主観的意見多め。解釈違いなどもあるかもしれませんが、あくまで私が感じたことですので。
それではいきましょう。
おしながき
本質をつかむ少女、星奈ひかる
「星奈ひかる」という少女。今回の映画では、真理・本質にたどり着くのが早い子であるように描かれていると感じました。
映画でひかるたちが出会った不思議ないきもの、「ユーマ」。まずはそのファーストコンタクト。
ララ「あっ… ひかる、あぶないルン」
ひかる「大丈夫。この子はたぶん… こわがってるだけだよ。」
ユーマ「☆~!」(ひかるに反応してトゲを伸ばす)
ひかる「大丈夫。大丈夫だよ。」
ユーマ「☆~!」(トゲをおさめる)
ひかる「ねっ?」
ララ「ああ…」
ユーマに警戒心の強いララ。それに対し、何かを見透かしたかのような様子で近づくひかる。興奮状態のユーマをおさめます。
ひかるの「本質を見抜く能力」…とでも言えばいいのでしょうか。直観的に正解が分かるという感じ。なかなか表現が難しいんですが。ちょっと真似できないですよね。
続いて、ひかるたちを海中に転移させたあと、ララが怒ったシーン。
ユーマ「☆~!」(怒りの感情?)
ララ「ルン?」
ひかる「あっ… ダメ!」
ララ「ひかる…」
ひかる「それはダメだよ!」
突如様子を変化させたユーマに困惑するララ。それをみたひかるは瞬時に反応し、ユーマの鎮静をはかります。ひかるのいう「それ」がなんなのか、正確にはわかりませんが……ユーマがしようとしていることをわかっているようです。
そしてユーマ暴走直前のシーン。
ユーマとの別れを拒むララ。ユニにもプルンスにもアン警部補にも否定され、最後の希望としてひかるに同意を求めます。
しかし、ひかるもララには賛同しないんですね。
後付けで言えば、ひかるはユーマが宇宙に帰りたがっているということを理解してしまっています。ここまでのように。ただ、ユーマとララ、両方の気持ちを知っているので、ここでは何も言えなくなってしまっているんですよね。
ですが、この時点ではそのようなひかるの想いはララに届いていません。
映画中のひかるには2つの仕掛けがあるように感じました。
1つはひかるが本質をつかむのが早い少女として描かれていること。
もう1つはひかるの心情が(後述のシーンまで)分かりにくくなっていることです。
この2つの仕掛けによって、私は色んな場面で「ひかるならどうするだろう、どうできるだろう」「ひかるはどう考えているんだろう」という思考に誘導されていきました。
そしてこれはまさしくララの思考。映画を見る中で、私たちはララとシンクロしていくのです。
視聴者はララに共感する
ひかるの感性というのは突出しています。特にこの映画では……
ですから、映画を見た人がひかるの気持ちの方に共感していくことってあんまりないんじゃないかと思ったんですよね。
では誰に共感するのかというと...…この映画を見た人はまず、ララに共感するんじゃないでしょうか。
面白い構造ですよね。地球人であるひかるよりも、異星人であるララにシンパシーを感じるようになっているんです。
ララはひかるのようにはできないけれど、自分なりに、不器用ながらも心を通わせていきます。
ユーマとの交流で、怒り顔、泣き顔、笑顔……様々な感情、表情を見せるララ。
そんなララの姿に、映画を見た人は心を揺さぶられるんじゃないでしょうか。少なくとも私はそうでした。
ただ、心を通わせるほど、別れというのは辛くなるもの。だから…
突然訪れた別れの時を、ララは受け入れられないわけです。
このシーン、”正論”かどうかで言えばユニやプルンス、アン警部補の方が正しいことを言っているんだと思います。スタードロップは宇宙に帰るべき。ずっと一緒にはいられない。ユーマの星に住むなんて現実的じゃない。どれもその通り。
ただ、映画を見ているとき私はララに共感しました。私見ですがそういう人が多いんじゃないでしょうか。というよりむしろ、ここでララ側に共感させることが、制作側の狙っていたものだと思います。そのために描写を積み上げてきたのです。
そしてここでララに共感する、共感してしまうようになっていることが、ヒカルとララ2人によって演出される終盤をより効果的にしていたと思うのです。
ひかるとララが手を取りあうまで
映画でのひかるとララは、どこかすれ違っていたんじゃないでしょうか。
はじめのすれ違いはユーマとの出会いのとき。ひかるはユーマとすぐ仲良くなり、ワープの力も使うことが出来たのに、自分にはできない。ある種のコンプレックスのような感情がララの中にはあったかもしれません。
ララが抱えていたモヤモヤは、彼女がユーマに想いをぶつけ、心を通わせたことで一旦は解決します。しかし、別れの場面で再びすれ違ってしまうわけです。
ここで、宇宙ハンターの言葉が入ります。
バーン「守ろうが うばおうが そいつにとっちゃ大して変わらねえ 全部おれたちヒトのやることだ そうだろ?」
ララ「あっ…」
宇宙ハンターはユーマをモノ扱いしています。だから、どうしようかなんて周りの勝手。それが”一緒にいたい”という想いでも、”利用したい”という思いでも。バーンはそう主張しているわけです。
そしてこの言葉はララに刺さります。ユーマといたいというわがままは、ハンターたちと同じなんじゃないかと思ってしまうわけです。自分のせいで…負の感情がまたララの中に生まれてしまいます。
ミルキー「わたしのせいルン…」
スター「えっ?」
ミルキー「わたしがユーマとはなれるのはイヤだって もっと一緒にいたいって… そのわがままがユーマを…」
このララの言葉を、ひかるは一度否定します。悪いのはハンターだと。でもすぐに思いなおって、自分の本音を伝えます。
スター「でも… 思ったんだ それだけでいいのかなって… 好きだったらユーマのこと… 私たちだけで決めていいのかなって」
ミルキー「それはダメルン! あっ…」
慰めではない本心。
そう、一番大切なのはユーマの気持ち。先ほどのバーンの言葉と対極になっているわけです。自分が好きだから…それだけではいけないんですよね。
先ほどひかるの心情が分かりにくくなっているといいました。しかし、この場面で初めてひかるの考えていたことが伝わるのです。地上での別れのときには伝えられなかった言葉。
大切なことに気づいたララ。そして本音を伝えられたひかる。すれ違っていた2人はここで1つの目標に向かいます。ララに共感していた私たちの心は、ここでひかるとも繋がる。みんなの想いが重なった瞬間だったと、私は思うのです。
このあと、ひかるとララは歌で想いを伝え、そしてユーマに届きます。それは2人の想いが重なっていたから。だから……
姿を現したユーマは、2人が重なった姿をしていたんだと思います。
おわり。