ミリアニ第10話感想です。
※筆者は先行上映にてミリアニ12話まで視聴済です。先の展開をほのめかす・展開を知っている前提の考察等は本記事で行わないつもりですが、気になる人はブラウザバック。
※アニメ先行上映を除く、ミリシタや各種コミカライズで既に公開されている情報を絡めた解説については随所に入れていくつもりです。そういう事前情報ナシで楽しみたいよ!という人もブラウザバック推奨。一応、本文中では色を変えて感想とは区別できるようにします。
《各種用語》
ミリシタ→”アイドルマスターミリオンライブ!シアターデイズ”のこと。ミリオン2代目にして現在唯一稼働中のソシャゲ。【2017年~】
グリマス→GREE版”アイドルマスターミリオンライブ!”のこと。ミリオン最初のゲーム。基本設定はミリシタに受け継がれているが今と異なるものもある。【2013年~2018年】
ゲッサンミリオン→漫画”アイドルマスターミリオンライブ!”のこと。ミリオン最初のコミカライズ。グリマス設定準拠。未来・静香・翼を中心とした作品。
BC/ミリオンBC→漫画”アイドルマスターミリオンライブ!Blooming Clover”のこと。アイマス界最長のコミカライズ。ミリシタ設定準拠。可奈・志保を中心とした作品。
BNS→漫画”アイドルマスターミリオンライブ!Brand New Song”のこと。ミリシタ設定準拠。百合子・桃子・このみを中心とした作品。
アニマス→THE iDOLM@STERのアニメ。765プロのアイドル13人(通称765AS:オールスターズ)が登場する。ゲーム"アイドルマスター2"準拠。始めてプロデューサーの顔をハッキリ設定した作品でもある。
劇場版→アニマスの映画。765ASに加え、ミリオンライブから登場したアイドルが7人登場する。ミリアニは概ねこの作品の後の時系列と考えてよいが、一部設定が異なるパラレルワールド。
苦悩
先輩とのライブ後、千早からオファーを貰った千早。
それは来られなくなった海外アーティストの代役。他に志保と星梨花がいて、バックコーラス+ソロ曲ということは、合唱団みたいな人たちが来るはずだったんですかね。
志保と星梨花は一期生なので、静香が選ばれたのは大抜擢と言えるでしょう。
願ってもない機会に静香は即答します。
そして始まる練習。初日にもかかわらず、メインの千早はキレッキレの仕上がり。
ASライブに参加して以降、憧れだった千早のことをより強く意識するようになっている静香。今の精神状態でこれを目の当たりにすれば、トーゼン焦るでしょうね。
「まだ始まったばかりだけど(意:そんなに焦る必要ないんじゃないかしら)」という志保の助言も届いているのかどうか。いやちょっと言葉は足りないけど。
さて、そんな10話は星梨花の打ち明け話からさらに動いていきます。
☆控え室:親の顔より見た画角。
それは「パパとケンカ中」というもの。はたから見れば微笑ましいんですが、静香にとっては自分の抱える問題を思い出してしまうようなエピソードでしたね。
肌で感じた千早の実力と、父親に認めてもらいたいという重圧。”上手くやらなければ”と自らを追い込む中で、次第に静香の笑顔は失われていきました。
そんな静香を見かねて、Pと千早が策を講じます。それは、会場である教会へと静香を連れていくことでした。
教会にて
千早のライブはチャリティーコンサート。家族を亡くした人に向けて始まったものだそうです。これに千早が参加する経緯を考えるとそれだけで1話作れそう。
☆千早は事故で弟を失った。ミリアニではその傷から立ち直った後の千早として描写されている。
教会にはまさにその当事者である家族が。言葉を失う静香たちでしたが... 千早が前に出て歌い始めます。
☆千早の歌:”G線上のアリア”にオリジナル歌詞をつけたもの。このおかげでクレジットにはバッハの名前が。また楽曲提供してください。
「言葉を尽くすより、音楽には心に染み入っていく力がある」と、神父さんが語ってくれたことを実際にみせてくれる千早。その想いを汲んで、志保と星梨花、そして静香が続いていく。
家族へ向けた歌で、静香は自分が歌う意味を思い出し、笑顔を取り戻すことができたようで。
だから静香は、感謝の言葉をくれた姉妹に、「こちらこそ、ありがとう」と返すわけですね。聴いてくれた人にありがとうを返すのは、ミリオンライブのメインテーマ”Thank You!”とも繋がってなんだかエモ。
この歌で気持ちが変化したのは星梨花も同じでした。やっぱりパパに来てもらいたい。先ほどの控え室のシーンでもそうでしたが、10話では星梨花の言動が静香に影響を与えたり、実質的な代弁として機能していたりします。星梨花とのケンカ話から静香の物語に展開させていく構成が美しい。
静香も「認めてもらわなくちゃ」からの呪縛から解放されましたが、父親に見てもらいたい気持ちは変わらず持っているんですよね。歌いたい本当の理由を思い出したから、焦らず”いつか”。
でも、”いつか”では我慢できない人がひとり。春日未来。主人公の出番です。
違いません
”いつか”と吹っ切れた静香。でも、だからこそ。前を向いた今の彼女を見て欲しいですよね。未来と翼、Pの3人は、静香たちを送り出したその足で最上家へと向かいます。
ライブに来て欲しい、と言われた静香父は「また、この前のような出し物ですか」と、原っぱライブの日のように嫌味っぽく返すのですが...
それに対するPの返答が最高でしたね。「違います…いえ、違いません!」あの日は何も返せなかったP。彼もまた成長している。
ここでPが原っぱライブのことも大切に思ってくれていて本当に嬉しかったですね。劇場で最初に見たとき、先に「違います!」って言われてあ~!ってなったんですよ。あれはあれで良かったんだから否定しないで欲しいなと。でもすぐ「違いません!」って言い直してくれてそれー!って感じで、Pへの信頼もアニメ制作陣への信頼も爆上がりしましたね。
振り返ると、冒頭で未来は「お父さんに見てもらうチャンスなんじゃない!?」と喜んでいました。静香に無意識のプレッシャーを与えていたこちらのセリフ。
これは憶測でしかないですが、未来は静香父に原っぱライブを”あんなこと”と言われたのを気にしていたのかもしれません。自分が発案した手作りの舞台のせいで、静香の夢が遠のいたかもしれない。だから正式な仕事を貰ったときに喜んだんじゃないかなぁ。
そんな未来にとっても、Pが原っぱライブを否定せずにいてくれたことは救いだったと思います。
あの日も同じように真剣だった。でも、あの日よりずっと進化している。それを見て欲しい。未来と翼がそう付け加えて、説得は終わりました。
その後、帰宅した静香。3人が家を訪ねてきたこと、そして父の「あのときの歌…」の本当の意味を、彼女はまだ知らない。
Gift Sign
そして当日。少し気負ってはいるけど、迷いはない。
念のため当日も発破をかける志保すき。
いよいよソロでの出番。
舞台袖で見守ってくれる未来と翼に、「ねえ、背中押してくれる?」と頼む静香。
2話オーディションのオマージュ。あの日のように、2人は笑顔で背中を押す。
でも、あの日と違ってしっかりと自分の歩幅で歩いていくんですね。成長だ。
何の曲が来るのかな、シチュエーション的には”Catch my Dream”だけどバラードなら…なんて考えていたんですが、”Gift Sign”、新曲とは驚きました。
静かで優しい歌い出しから、力強さを増していく。
これまでずっと、父親にアイドル活動を許してもらえるかを気にしていた静香。でもこの日、未来やPが静香父が来るかを気にしていた一方で、静香にその様子は見られませんでした。
認めてもらうとか、上手くやらなきゃとか、そんな気持ちは忘れて。
今の静香は、「伝えたい気持ち」「届けたい歌」「支えてくれる想い」のためにステージに立っているから。
支えてくれる想い、その象徴である2人の手のひらの感触が、翼になって彼女を未来に羽ばたかせる。
ラスサビの力強さと晴れやかな表情よ。マイクスタンド前で動かず歌うという、アニメーションとしては(羽根はともかく)派手さを抑えた演出なのですが、そのぶん歌と表情が引き立っていますよね。”最上静香”というキャラクターの魅力を信用しきった歌唱パートだったなと思います。
そんな静香の歌を、実はちゃんと見届けていた父。
ここで、幼少期の静香のシーンが、仕事で疲れた父親を元気づけたときだったとわかりました。アイドルに憧れた原点で、静香は誰かのために歌っていたんですね。そして、そんな本人すら忘れていそうな思い出を、最初のファンはちゃんと覚えていたと。あるいは未来の説得のときに思い出したか。
それでも娘のためとアイドル活動に反対していた彼のなんと頑固で不器用なことか。こういう部分を見ると血だなって。
最後はそんな2人が対面して締め。静香を投げ出す志保、言葉はないけど表情で語り合う親子、全員不器用で好き。
というわけで、10話のラストでついに静香のアイドル活動が認められたわけですが、静香の心情としては父親と対面する前から吹っ切れて、アイドルとして目覚めているのがポイントですよね。
仮に父親が見に来ていなくても、静香は先に進むことへの迷いを持たなかったでしょう。それゆえに、最後のやり取りがシンプルな親子の和解として成立しているとも言えます(静香の笑顔が、”アイドルを続ける許可”への外発的な喜びでなく、父親と心が通じたという内発的な喜びになった)。
それにしても、静香のアイドル活動が完全に認められるのはこの世界線が初じゃないでしょうか。流石、アニメだけあって大きく進めましたね。もしかするとこれがミリシタにも逆輸入されるかも?
余談:志保について
ここからはミリアニでは直接語られなかった志保の背景について、知らない人向けに少し補足。
本編でも何度かほのめかされていましたが、実は志保には父親がいません。今回の仕事に志保が呼ばれたのは、間違いなくこの背景あってのものでしょう。
正確に言うと、弟が生まれて少ししてから、突然いなくなったとされていますね。父親の意志あってか、それとも事故などで行方不明なのか、具体的な部分は明らかになっていません。志保が肌身離さず持ち歩いている黒猫は父親に貰ったものであることがわかっています(BC5巻)。
ミリアニでは、少なくとも一期生はりっくん(志保の弟)を知っているため家庭事情についても聞いていると思われます。チャリティーコンサートの話を志保に持ち掛けた千早も恐らく知っているはず。
逆に静香はまだ知らないでしょうね。知っていたら父親との確執をあんな風には話さないでしょう。
なので、6話で静香が父親とのことを話したときや、10話ラストで静香を投げ出したとき、一体志保がどんな思いを抱えていたのかということですよね。父親との確執は静香にとって非常に大きい問題だと理解する一方で、言い争える相手がいることがどれだけ恵まれているのかと、甘えるんじゃないと思ったかもしれません。
それでつい言い過ぎてしまったり、吐いた言葉が自分にも返ってきたり、静香の歌で逆に救われたり。彼女は彼女で、未熟だったり不器用だったり。
正反対であり、似たもの同士でもある。改めて静香と志保の関係性っていいなと思う次第でした。